LCCvs.高速バス
中・長距離を安く移動するには高速バス、というのが、2000年代までの常識でした。ところが、LCCの登場で、その常識も覆されています。価格だけで比べれば、高速バスよりもLCCのほうが安い、というケースが急増中。相手は飛行機ですから、価格だけでなく快適性や速達性でも高速バスより優位に立っています。
とはいえ、LCCにはさまざまな制約があるのも事実。価格だけでなく、さまざまな利便性を考慮して、比較してみましょう。
高速バスとLCCが直接競合する「関東-関西」「関東-福岡」「関西-福岡」の3区間を例に見ていきましょう。
関東-関西は高速バス有利?
関東-関西のLCCは、ジェットスターとピーチアビエーションが成田空港-関西空港便を運航しています。
東京都心からの場合、成田空港までのアクセスが時間がかかりますし、関西空港も便利な立地とはいえません。新宿~梅田の所要時間は、LCCで5時間、高速バスで8時間くらい。LCCのほうが速いと言えば速いですが、圧倒的な時間差ではありません。
価格は変動しますが、高速バスが約4,000円~、LCCも約4,000円台~。LCCは空港へのアクセス費用は別途かかりますから、LCCの実質価格は6,000円~くらいでしょうか。時間差と価格差を考えると、LCCが必ずしも優位とはいえません。むしろ、乗り換えがなく便利な高速バスのほうが有利かもしれません。
関東-福岡はLCCが優位
関東-福岡は、高速バス路線は限られており、主要バス会社では西鉄「はかた号」くらいです。一方、この区間は航空業界の競争が激しく、LCCの価格も安くなっています。
価格は時期によりますが、バスもLCCも8,000円~10,000円くらいで、LCCのほうが安い場合すらあります。空港アクセスの時間や費用を入れてもLCCの圧勝といえます。
関西-福岡もLCCが優位
高速バスとLCCの競争がもっとも激しいのが、関西-福岡。LCCなら4,000円程度~の価格設定。曜日にもよりますが、6,000円くらいで座席を確保することは簡単です。これは高速バスでは「4列ゆったりシート」の価格帯とほぼ同じ。
関西-福岡間は、福岡空港のアクセス利便性が高いこともポイント。時間的にも費用的にも、LCCに優位性があります。
関西拠点LCCは強し!成田拠点は今ひとつ
こうしてみると、関西空港を利用する場合、LCCはそこそこ便利といえます。関西空港は伊丹に比べると不便ですが、大阪市内から極端に離れているわけではありませんし、お手頃な交通機関も豊富です。そのため、関西地方発着の旅行は、LCCの利便性が高くなっています。
いっぽう、成田空港は、関西空港よりも不便です。都内と成田は空港はバスで1時間。最近は1,000円程度で行ける格安バスが登場したものの、遠いのは否めません。
したがって、成田拠点のLCCが高速バスに対して優位性を発揮するには、岡山以西、盛岡以北くらいの距離が必要になりそうです。現時点では、成田LCCは高速バスの脅威にはなっていません。
LCCは大手航空会社よりも時間がかかる
LCCは、大手航空会社よりも時間がかかります。飛んでしまえば大手もLCCも同じなのですが、LCCは乗るまでが大変です。たとえば、絶対に遅刻できませんので1時間くらい前には空港にいなければなりませんし、せっかく早めに空港に着いたのに、今度は飛行機が遅延する、というケースも少なくありません。
そうしたトータルの時間を含めると、成田からの場合は飛行機の出発時刻の3時間前には都内を出る必要がありますし、関西からの場合でも2時間前には大阪市内を出ておく必要があります。こうした時間を計算して、高速バスと比較しましょう。
安くて速いLCC、信頼性は互角
いろいろ比較してきましたが、結論をいえば、LCCが運行されている区間はLCCのほうが便利でしょう。LCCは価格が直前になると高くなりますが、それでも高速バスとそう大きくは変わりません。また、狭い飛行機に乗っている時間はわずかですから、高速バスの4列シートに何時間も乗るよりはだいぶマシ、という意見もありそうです。
LCCは運休や欠航が多く、信頼性に欠けるという意見もありますが、実際はそれほどダイヤが乱れることは多くありません。高速バスもそうそう運休しませんし、お盆や年末年始などを除けば大渋滞で動けなくなることも滅多にありません。信頼性・確実性では、互角といえるかもしれません。
現時点では、LCCと高速バスの両方があれば、LCCを選択したほうが安くて快適に移動できそうです。確実性を求めるなら、LCCでも高速バスでもなく、新幹線や大手航空会社を選ぶのがいいでしょう。
最後に気を付けることとして、LCCはキャンセル不可が原則です。一方、高速バスはキャンセル料はかかりますが、キャンセルは可能ですし、キャンセル料も直前以外は低額です。
こうした違いも頭に入れて、予定の確実性、遅延の許容度などを踏まえて選ぶと良いでしょう。